治療方法の選択
さまざまな矯正装置・方法をご用意し、患者さまのご要望にお応えいたします。
歯列矯正の方法は大きく分けて、ワイヤー矯正、マウスピース型矯正装置、補綴前矯正、外科手術を併用する矯正があります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、また、適用範囲が限られているものもあります。治療の際の痛み、治療時の見た目、治療期間、費用など、それぞれの特徴をご理解いただき、そのうえで患者様ご自身の症例に最も適した治療方法をご提案させていただきます。
患者様が選択された治療方法において、痛みなどのご負担はできるだけ少なく、効率的により良い結果が得られるよう努力いたします。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は歯に装置(ブラケット)を接着し、それに特殊な矯正用ワイヤーで弱い力を加えてゆっくりと歯を動かしていくものです。この矯正方法は最もよく選択されており、十分な実績をもっています。接着剤や装置など、従来のものより小さく目立たない、移動速度を速める、痛みを抑えるなど、さまざまに開発が進んでいます。
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クリアブラケット
小さな透明プラスチックなのでかなり目立ちにくくなります。咬み合わせが深い方でもブラケットが削れてくれる為歯が削れる心配がありません。料金は、通常の矯正治療に含まれています。歯みがきが苦手な方は、ブラケット周囲に汚れが残ってしまうこともありますので日常のケアが大切になります。
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審美ブラケット(ジルコニアブラケット)
人工ダイヤに使われるほどの硬さと粘り強さがあり、目立ちにくい、壊れにくい、汚れにくいなどのメリットがあります。追加代金(33,000円)がかかります。咬み合わせが深い方は適応外となりますので、患者様にあったものをおすすめさせていただきます。
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舌側矯正(リンガルブラケット矯正装置)
舌側矯正とは、ワイヤーやブラケットなどの矯正装置を全て歯の裏側に付けて治療を行います。正面からは矯正器具が見えないため、他人に気付かれにくいメリットがあります。矯正装置には、いくつかの種類があり、症例にあわせて選択しています。
※操作が複雑で1回のチェアタイムが長くなるため土曜日・平日17:00以降の診察をお断りする場合がございます。
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ハーフリンガル(コンビネーション)矯正
目立ちやすい上の歯のみ舌側装置を使用し、見えにくい下の歯には表側装置をつけて治療を行います。舌がよく当たる下の歯を表面装着にすることで、違和感が軽減されます。ご予算やご希望に応じてブラケットを選択していただくことができるので、フルリンガルに比べ費用も抑えられます。
※操作が複雑で1回のチェアタイムが長くなるため土曜日・平日17:00以降の診察をお断りする場合がございます。
マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置(インビザライン・ASOアライナー)
マウスピース型矯正装置は、アライナーという目立たない透明のマウスピースを使用する方法です。他の矯正法とは異なり、装置の取り外しが可能です。1日20時間以上の装着で徐々に歯の移動をさせていきます。装着が1日20時間を下回る場合、治療結果に大きく影響が出てくるため、患者様の協力がないと目的の位置まで歯を動かすことができません。この方法は、全てのケースに適応できるわけではありませんが、部分的に目立たない部位でのワイヤー矯正を併用することで、幅広いケースに対応できます。マウスピース型矯正装置は、歯の移動量が限られるため、段階にわけて数種類のマウスピースが必要となります。インビザラインは、治療開始から終了までの動きをシミュレーションし、各段階のマウスピースをまとめて作製するため、来院回数を減らすことができます。アソアライナーは、各段階ごとに型をとる必要があるので、再治療の方や比較的治療ステップが少なくて済む症例に適応しています。
※インビザラインは海外技工物のため完成物が薬機法対象外であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
外科手術を伴う矯正治療
外科手術を伴う矯正治療には、治療期間を短くするための歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療(インプラント矯正)、外科併用型促進矯正法(コルチコトミー)、歯牙移植、さらに、矯正治療単独では十分な歯列・咬合を実現することが困難症例に用いる外科矯正があります。
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歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療(インプラント矯正)
- スクリュータイプ
- 極小のインプラントを歯ぐきに埋め込み、これをワイヤーの支柱として使用します。通常のワイヤー矯正では臼歯を支えに歯を動かしますが、この臼歯自体が動いてしまう場合があり、固定源が不安定だと歯の動きにも影響が出できます。インプラントなら固定が確実なため歯の効率的な移動が可能となります。治療後はインプラントを除去します
- プレートタイプ
- より強固な固定源が必要で移動量が多い場合に使用します。
- 歯牙骨支持タイプの急速拡大装置(MSE)
- 口蓋にインプラントアンカーを埋入することで、大人でも正中口蓋縫合部からの拡大が可能になります。難易度により、コルチコトミー再生療法と併用します。
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外科で併用する促進矯正法(コルチコトミー)
矯正治療の開始前に歯ぐきを切開し、歯を直接支えている骨に切り込みを入れて歯を動きやすくする治療法です。一度切った骨は回復すると以前よりも丈夫になるため、歯周組織に問題がある症例では、その改善に役立てます。治療期間の短縮は望めますが、術後に腫れや痛みを伴います。歯や歯骨の状態、歯肉の状態によるため、誰もが適応となるわけではありません。
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外科矯正
通常の矯正治療だけでは十分な歯列・咬合を実現することが困難な場合に、顎骨を外科的に手術で切って動かす外科矯正が行われます。極端な出っ歯や受け口といった不正咬合では大きな治療効果が期待でき、矯正の中では唯一保険が適応となる場合があります。最初にワイヤー矯正を行い、外科手術後に再度ワイヤー矯正を行いますが、舌側矯正などの自費による目立たない装置も選択いただけます。
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移植を利用した矯正
移植した歯は、他の歯と同じように機能することが可能であるという性質を利用して行う治療です。ご自身の不要な歯(親知らずや咬み合わせに関係していないあまった歯など)を抜き、歯のない部分に移植します。移植後に矯正治療で動かしてきれいな歯並びにしていきます。ご自身の歯を利用するため拒絶反応もなく安心です。
補綴前矯正
インプラントやブリッジを入れる前に歯列を部分的に整えたり、足りない隙間を開ける矯正治療。
矯正治療で選ばない補綴(かぶせもの)による歯列不正の修正
セラミック(陶材)製のクラウン(かぶせ物)やラミネートベニアなどの人工歯を使って、短期間で見た目を改善できるメリットはありますが、歯周組織に負担をかけたり、健康な歯を削ったり、歯髄をとったりする場合があるため、それによるデメリットも考慮する必要があります。
矯正治療によりよい効果が期待できる口腔筋機能療法(MFT)
口腔機能(呼吸、発音、咀嚼、嚥下)の異常や唇や舌のくせ(舌癖)などは、不正咬合の原因・矯正治療の妨げ・治療後の後戻りの原因となります。これらを改善するためのトレーニングとして、当院では口腔筋機能療法(MFT)を導入しています。
MFTでは、咀嚼・嚥下の訓練により舌と口唇の動きと位置を是正し、また、口腔筋(舌や唇、顔面の筋肉)を強くして歯列に対する筋圧のバランスを整えます。これにより歯並びや噛み合わせの改善が望め、またそれらの予防にもつながります。特に矯正治療を効率よく進める上ではMFTとの併用をおすすめいたします。